座います。その時に一番目立つた汚ないぼろぼろの服をきて、城門のまぢかに、見物にまぢつて、立つてゐてください。』かう云つてお嫁さんは、王様の家来に連れて行かれました。
 昔からこの国では、三年に一日だけ大きな城門を全部押しひらいて、臣民に城の内部をみせる習慣になつてゐるのです。
 その日は王様を始め何千といふ家来達が、ふさふさの赤い帽子をかむつたり、金の鎧を着たり、色々な盛装して[#「色々に盛装して」または「色々な盛装をして」と思われる]門の中の床几に、腰をかけるのです、人民たちは門の中には入ることが、出来ませんが、城門の傍《そば》まで立ちよつて中を見ることが出来るのでした、そして午後の五時になると、重い鉄の扉がガラガラと閉ぢてしまふのです。
 果してトムさんのお嫁さんの言つたやうに、城門開きの、おふれが人民に伝はりました。愈々当日になりますとトムさんは、乞食のやうな、汚ないボロ/\の服を着て、顔には泥を塗つて杖をつき、腰をかがめて、お嫁さんに言はれたとほり、見物人の一番前に出しやばつて、お城の門のひらかれるのを待つて居りました。
 やがて時間が来て、城門は大きな響きをたてゝ、がらがらと
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