も、そのまた翌日も帰らうとはしません。
或る日お姫さまはトムさんにむかつて『何卒、わたしを、あなたのお嫁さんにして下さい』
と頼みました、トムさんは大喜びで早速承知をいたしました。
村の人達は馬鹿な詩人の美しいお嫁さんを見て吃驚《びつくり》しました、しかし心のうちでは、あのお嫁さんも、三日経たぬ内に逃げだしてしまふわいと思ひました。
お嫁さんはたいへんよく働きました。その手が柔らかくお上品にできて居りましたから、畑を耕したり、荒仕事ができません、そのかはり針仕事をしたりお料理をしたりすることが、たいへん上手でした、トムさんはまた、一粒の豆でも半分に分けて喰べるやうに、仲善くしましたので、お嫁さんも満足をいたしました。
ところがトムさんが働きに出かけますが、ものの一時間も経たぬうちに、さつさと仕事を止《よ》して帰つてきてしまひます。
それはもしも、トムさんの不在に、たいせつなお嫁さんが、鼠にひいてゆかれたり、犬にくはえてゆかれたりしては大変だと、心配になつて仕事が手につかないからです。
トムさんは、このことをお嫁さんに話しますと、お嫁さんは、それではよいことをしてあげようと
前へ
次へ
全137ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング