ゝ怖かつた、わたしは魔法使の魚にあつたの。』
かう言つて家に帰つた妹娘の魚は眼をまんまるにしながら、くはしく様子を物語りました。
『まあなんといふ不思議な魚なんだらうね。』
母親の魚は言ひました。
『このとしになるが、ついぞ見たことのない魚だなあ……。』
父親の魚はしきりに頭を傾けて考へました。姉娘はたいへんはしやいで、明日は沼の岸に行つて、是非この美しい青い小父さんに逢つて、お友達になつていたゞかなければならない、ことにダンスが上手だといふのなら、わたしと青い小父さんと、どちらが上手か踊りくらべて見なければならないと言ひました。妹は姉にむかつて、その青い魚はきつと悪魔か、魔法使にちがひないからとしきりにとめましたが、姉娘はきゝませんでした。
その翌日、姉娘の魚は沼の岸に行つて、さかんに踊りながら、青い小父さんの来るのをまつて居りました。
『淡桃色《うすもゝいろ》のリボンをつけたお嬢さんよ、なんといふ踊りの巧みなことでせう。水の中にすんでゐる、蝶々のやうだ。』
かう言つて沼岸のしげみから出てきましたのは、妹のいつた青い小父さんでした。
姉娘の魚は、すつかりこの青い小父さんと
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