つかな果物が実つてゐたり、小羊といつしよに広つぱにあそんだり、小鳥の家《うち》に招待されてごちそうに、なつたりしてゐると、少し位の疲れたのは忘れてしまふよ。』
 かう青い小父さんは話しました。
 それから陸の上の景色は、水の中の景色よりずつと美しいことから、花園にすむ蝶々のはなし、人間の街と馬に乗つた兵隊さんのはなし、楽器の巧みな昆虫達のはなし、その他さま/゛\のおもしろいことを、青い小父さんはゝなしてくださいました。
 魚はちよつと散歩をして見たいやうな気持になりました。
 青い小父さんは、最後に魚に散歩をして見よう。案内は私がしてあげませうと、盛んにすゝめました。
 青い小父さんは、自分が水の魚であるといふことを証明するために、水の中にはひつてさかんに泳ぎ廻りました、そのまた泳ぎ方が非常に上手で、どんなに姉さんが巧みに踊りながら泳いでも、とてもこの青い小父さんの足もとにも追《おひ》つかないほど、しなやかな体をして泳ぎました。
 妹の魚はふと青い小父さんの体のどこにも、魚のもつてゐる鰭のないことに気がつきました。
 妹娘は急に怖くなつたので、いつさんに自分の家に逃げ帰りました。
『あ
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