ぎになります、アイヌ達は家の中に逃げ込んで、戸口をしつかりと押へつけ、そとから開かないやうにしました。
そして恐ろしさにぶる/\ふるへて居りました。アイヌ達の犬も、ふだんは猟に出て熊と格闘をするほど勇気がありましたが、この幽霊船が現はれると、尻尾をまいて、ちゞみあがつて、家の中に逃げ込んでしまふのでした。
沖に現はれた帆船の上からは、小舟がおろされ、見ると子供ではないかと思ふほどの小さな男が短かい手槍を抱へて、ひらりと小舟に飛びをりました、顔が朱のやうに赤い男でした。
小男はたつた一人で小舟にのつて、上手に漕ぎながら、岸にむかつてやつて来るのでした、船が岸に着くと、小男はその村の酋長の家の戸の前にたちました。それから戸を叩きながら『海へ行かう、海へ行かう、海は大変きれいだよ』といふのでした。
するとアイヌの酋長は悲しさうな顔をして戸口にあらはれました。そして酋長はこの不思議な小男に連れられて、沖の船に乗せられてしまひました、酋長はいつまでたつても村に帰つてきませんでした、もし酋長が、『私は海へ行くのは嫌です――』などと言へば、たちまち小男の手槍で突き殺されてしまふのです。アイヌ
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