しも笑ふことがあれば、その時がいちばん不幸なときとされてゐるのです。』
と言ひました。
『でもわたしは、笑つてみたいんですもの、思ひきつて大きな声でね、どんな恐ろしい不幸がやつてきても』
緋牡丹姫の唖娘はかうしみ/゛\と言ひました。
白い牡丹の花はたいへん緋牡丹姫に同情いたしました。そしてそのうちの頭《かしら》だつた牡丹がみなの牡丹に相談をしてみました。
『哀れな、笑つた事のない緋牡丹姫の為に、私もいつしよに笑ひませう。』
かう言つて、親切な白い花達は、緋牡丹姫のために、恐ろしい不幸がやつてくることを、知りながらも、賛成をしてくれたのでした。
緋牡丹姫は、ほんとうにこころから感謝いたしました。
そして緋牡丹姫は、こころから大きな声で笑ひました、そしてそれに続いて白いたくさんの牡丹達も、崩れるやうに声を合して哀れな緋牡丹姫のために笑つてくれました。
その翌朝、赤い衣装《ころも》を着た少女が悲しさうな顔をして花園に立ちました、そして一夜のうちに散つてしまつた花園の牡丹をながめながら
『こんなに散つてしまふほど、花達はきちがひのやうに笑つたのだろうか。』
と思ひました。(愛国
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