れますので、どんなに悲しい出来事があつても、じつと堪《こら》へてをりました。そして野原の誰もゐない、静かな草の上にきて、せいいつぱい、蛙のやうな、醜い声を張りあげて泣くのでした。
唖娘は、草花の花弁を糸につなぎながら、とき/゛\胸に手ををいて、五日も十日も一月も、二月も、それよりももっと/\以前の悲しい出来事までも思ひだしてはたつた一人で泣きました。しかし悲しい事がまいにち沢山つづきましたので、お友達の誰よりもあふれるやうにもつてゐた唖娘の涙もかれてしまひました。そして、蛙よりもつと醜い、『ひいひい』と馬のやうな声をだして泣くやうになりました。
それに唖娘の涙は、もう頬に流れることがなくなつて、瞼の内側に火のやうに熱くたまつた僅かばかりの涙が顔の中にながれました。
そのとき、はじめて唖娘は涙は海の水のやうに塩からいものだといふことがわかりました。
二
しかしやがて馬のやうに泣くことも、唖娘にはできなくなつてしまひました。
いつも唖娘の泣く声の面白さに、さま/゛\なことを言つて、唖娘を泣かした意地の悪いお友達も、唖娘が泣かなくなつてから、誰も対手《あひて》にしなくなり
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