《かれひ》は全部真白だよ、この頃の海の水は非常にきれいになつた、それで鰈の奴も白くなつたのだらう――』と言ふのでした、仲間の漁師は考へた。自分達が漁に出ても、海の水は相変らず濁つてゐるし、だいいち真白になつた鰈などは、釣れたためしがないので、その言葉を怪しみました。
『そんな筈がない、ひとつその君の白い鰈といふのを拝見させて貰はうぢやないか――』
 漁師達は打ち揃つて男の家へ行つてみました、男の家の土間には、なるほど真白い鰈が列べられてゐましたが、よく見ると鰈の腹側の白いところを、みんな上向にして列べてあることがわかりました、漁師達は、それをひつくり返して、表の黒いところを出して指さしながらいひました。
『君は妙な男だよ、こないだから大分、暴風波がつづいてゐたが、このたつた二三日、凪があつただけで、すぐ気の変つたことを言ふのは困りものだね、鰈の裏表もわからずに、よくもこれまで漁師をやつて来られたもんだ、大体君といふ男は物の裏表がわからんばかりぢやない、前に言つたことを、手の裏を返すやうに、平気で変へてしまふ、信用のできない、ズルイ男だよ――』
 かういつて笑ひながら一同は帰つてゆきまし
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