然も後代の利巧な子供達が
怖ろしがつて手も触れない
画帳の中の
主人公となることを。


親と子の夜(遺稿)

百姓達の夜は
どこの夜と同じやうにも暗い
都会の人達の夜は
暗いうへに、汚れてゐる
父と母と子供の呼吸は
死のやうに深いか、絶望の浅さで
寝息をたてゝゐるか、どつちかだ。

昼の疲れが母親に何事も忘れさせ
子供は寝床から、とほく投げだされ
彼女は子供の枕をして寝てゐる
子供は母親の枕をして――、
そして静かな祈りに似た気持で
それを眺めてゐる父親がゐる。

どこから人生が始まつたか――、
父親はいくら考へてもわからない、
いつどうして人生が終るのかも――、
ただ父親はこんなことを知ってゐる
夜とは――、大人の生命をひとつひとつ綴ぢてゆく
黒い鋲《びよう》のやうなものだが
子供は夜を踏みぬくやうに
強い足で夜具を蹴とばすことを、
そんなとき父親は
突然希望でみぶるひする
――夜は。ほんとうに子供の
 若い生命のために残されてゐる、と
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
俳優女流諷刺詩篇

俳優人物詩

赤木蘭子論

彼女は娘役が上手で
女学校三年生の感じを出す
まるで
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