姿をみると
ふるへあがつて
水を掻くヒレも動かなくなるほどでしたが
刺身庖刀はここでも
精悍にとびかかつて
鮪の一番いいところを頂戴しました
鮪は泣き泣き逃げました
偶然大鯛と鮪が逢ひました
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
鮪は「おゝ大鯛クン君もやられたか」
大鯛「ウン残念だ、このまゝ引つ込むのは癪だ」
鮪は「大鯛君ところで近頃は新体制で、我々は目方売になつてゐるんぢやあない」
「さうだ、さうだ、俺達をハカリにかけないで、目分量で、そいで行きやがつた。陸上に知らしてしまおう」
[#ここで字下げ終わり]
そこで鮪と大鯛は
急いで事情を陸上に知らせました
さうとも知らず刺身庖刀は
意気揚々と鮪に大鯛の身をひつさげて
波打際につきました
そこに白い皿が二枚
どうだね首尾はと待つてゐました
しかし彼等が陸へ上るか
上らないかに庖刀と二枚の皿は
経済警察の手で
捕まつてしまつたのです
無題(遺稿)
あゝ、こゝに
現実もなく
夢もなく
たゞ瞳孔にうつるもの
五色の形、ものうけれ
夢の路筋耕さん
つかれて
寝汗浴びるほど
鍬をもつて私は夢の畑を耕しまはる
こゝに理想の煉瓦を積
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