をみてさう思つた
あいつらは全く新しいし
さうだ、人間はまだ全く古びてはゐなかつた筈だ、と
人間も自然も新しいのだ
憎悪、愛、それらに古い被布を
着せるのはまだ早い
小松の伐りだされる遠い日のことを思ふ
我々も時代から
全く新しい憎悪と、愛とを発明しよう
それを伐り出さなければならない
強く憎み、強く愛する仕事
しかもそれは新しく
発明されたものであれば無限に展開されるだらう。
寓話詩
――新ベニスの商人――
米屋は言つた
―一升だけなら売りませう
しかし、と彼は舌なめずりして
―一升の代金のほかに
貴方のモモの肉も一片下さい
そこで聖人は米を受け取つて
―よろしい、肉をあげませう
しかしせめてこの米を炊いて
喰ふ間だけ御猶予ください
聖人は米の袋を抱へて帰つて行つた
いくら待つても聖人が
モモの肉を渡しに来ないので
米屋は聖人の家に行つてみた
すると聖人は戸口に張紙して
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「米を炊かうとしたら
炭がなかつたので
これから炭買ひに
諸国行脚にでかけます―」
[#ここで字下げ終わり]
ある小説家に与ふ
君は真剣に文学を綴つてゐる
つまり
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