をまんまととつて進ぜよう
引つこめ大根役者
文学の世界でいつまでも
政治上の主役らしい顔つきをするな
我々は単なる端役として
つまり四本の馬の脚として
熱い汗だらけになつて
縫ひぐるみの綿のなかから主張する
激しいたゝかひの幕のあげおろしに
意地を張つて芝居をするな
引つこむべきところは
男らしく引つこむのだ
幕があがつたら別な外題に
また新しく顔を塗りなほして君は出てくるさ


転落

すばらしい動揺だ、
このまま私が椅子から
ころげ落ちて死んでも
私はすべてのものに感謝ができる、
その動揺はどこから来た――、
周囲からきた、
私は知つてゐる
風が葉をうごかしてゐるのを
見た、
理解した、
友の眼の色を
感動した
夕日が空をズリ落ちるのに、
いつさいのもの
私の視野のものは束となつて
私をそれで殴りにきた、
立ちあがつてきた
物体、思想、色彩、音響

けつしておそれない、
歴史を背負ひこむのは
あらゆる負担は
私の義務のすべてだ、
あらゆる動揺が
私を転落させるのを
私はむしろそれを待つてゐる。


インテリの硬直

君は何を待つてゐるのか
そのふてぶてしい顔つきをして
その顔つきは
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