和しい、
僕の新しい野性は 永遠に馴れない野性だよ、
さあ、同志咆へ始めよう 曾つての美しい言葉のもつ意味の
積極性を再製しよう
さう、恥づかしがらないで
練習始めだ、
タワリシチ、
タワリシチ、
ボリシェビイキ、
ロートフロント。


芝居は順序よくいつてゐる

ハムレットの乱心が済んで
ファウストの穴倉苦悶だ
お次は―夜明け前の半蔵が
河童のやうな顔つきで
舞台に現れ
観客をゾッとさせる
残るところはリア王の
嵐の中の大絶叫だ
フン、芝居は
手順よく行つてやがらあ、
タワリシチ、
俳優諸君
現実はこゝに至れば
演技の上手な階級が勝ちさ
国民は倒れかけの
書割の下で生活してゐる
演劇的時間と
現実的時間の
区別なんて無いね
俳優諸君は舞台の上で
観客諸君は舞台の下で
せいぜい上手に
芝居をやることだ。


日比谷附近

―純情な国民よ、
群集の中から誰かが叫んだ、
それは私のそら耳であつた。
濠を背景に、兵士達は活動してゐる、
私はそれを眺め
美しいと思ひ、
勇しいと思つた、
『強い者は凡て、美しいのだ。』
『でなければ、醜い程に強いか、どつちかに違ひない。』
私は時代的な、新しい妬
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