たりる
財布をあけると
銀行では金を入れてくれる
「あれが慾しい、これが慾しい」と
眼でもの言へば、
デパートでは、
金持、政治家、
身分いやしからざるものには
それぞれ係りの店員がゐて
○○様係りの店員は
片つ端から品物を
配達部へ廻してしまふ、
代金はお邸の方へとりにゆく。
旦那さまには
無人の野を行くがごとき
大胆不敵の生活ぶり。
寓話的な詩二篇
温和しい強盗
真夜中、戸をたたく
トン、トン、トン、トン
[#ここから1字下げ]
「今晩は、今晩は
夜更けて済みませんが
強盗ですが入つて構ひませんか」
「どうぞ――」
「ははあ、人道主義者の家だな」
[#ここで字下げ終わり]
真夜中、戸をたたく
トン、トン、トン、トン
[#ここから1字下げ]
「今晩は、今晩は
夜更けて済みませんが
強盗ですが入つて構ひませんか」
「真夜中に喧ましい奴だ
伝家の宝刀で、ぶつた切つてしまふぞ」
「ははあ、軍人の家だな」
[#ここで字下げ終わり]
真夜中、戸をたたく
トン、トン、トン、トン
[#ここから1字下げ]
「今晩は、今晩は
夜更けて済みませんが
強盗ですが入つて構ひませんか」
「眠い、眠い
前へ
次へ
全75ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング