、ムニャ/\
今頃誰だ、強盗?
まご/\してゐないで早く
そこの橋を向うへ渡つてしまへ」
「ははあ、刑事の家だな
成程、あの橋を渡れば
向うの署の管轄か」
[#ここで字下げ終わり]
真夜中、戸をたたく
トン、トン、トン、トン
[#ここから1字下げ]
「今晩は、今晩は
夜更けて済みませんが
強盗ですが入つて構ひませんか」
「いち/\ことわつて入る奴があるか、ずつと通れ」
「ははあ、こゝは刑務所だな」
[#ここで字下げ終わり]

猿と臭い栗

猿の子供達が栗をとつてゐると
不思議な見馴れない
二つの栗をみつけた
驚ろいて父親の処へもつてゆく、
「何だ、これは栗とは違ふやうだ
毛だらけの丸いものだ
何処で拾つてきた」
「これが偶然、栗の木になつてゐたよ」
「どれどれ、はゝあ、判つた
これが人間の世界の
偶然の毛鞠といふものに違ひない
そんな物は早く捨てゝおいで」
「でも折角、拾つたんだもの
捨てるのは惜しいや」
「ぢや交番へ届けておいで」
猿の子供は猿の交番へ届けに行つた。
お巡りさんはつくづくみて
「やつかいなものを拾つてきたな
これは人間の世界でも
手余しものぢや、
今時こんなものは

前へ 次へ
全75ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング