猫の手も借りたい
忙しさに
やれ、講演会の
やれ、座談会のと
一にも秋田、
二にも秋田と
百パーセントに
好々爺は利用されてきた、
艶々しい白髪を
上座に据ゑることは
集まりに貫禄と重味を添へるから、
あつちからも、こつちからも
お座敷がかゝつてきた
手弁当、電車賃自分持ちで
老爺はにこ/\出かけて行つた
やがて雷は静まり
山蔭に遠く去つた時
すべての利用価値も去つてしまつた、
後輩共は老爺を
階級のトーテムポールのやうに
偶像化し
ジャアナリズムは
まだ年譜を書くほど
老い込んだ歳でもないのに
五十年の過去を綴らして
追想主義者に
片づけてしまつてゐる、
霜の朝
ふと胸の中の『創作慾』といふ
大切な球を
なくしてしまつたのに気がついた
日本のルナチャルスキーは
いま苦しんでゐる
失われた球を求めて。
窪川鶴次郎へ
あなたの神経質は立派なものです
だが興奮剤の常用はお廃しなさい
マムシ酒では○○○○[#「○○○○」に「ママ」の注記]は勝てませんから
あなたの評論の文体は出色です
ちよつと私が型録《かたろぐ》を示しませう
『つまり、犬の口が尻尾を
咬へたといふことは、
尻尾が犬の
前へ
次へ
全32ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング