口に
咬へられたといふことであるんである』
これでは犬がぐるぐる舞をする許りです、
いたづらに読者を混乱させます
どうぞ書斎の机にツヤブキンでもかけて
呼吸を統一して
まとまつた作品を見せて下さい
お見せにならんところをみると
さーては、備へつけた
『オゾン発生器』が
壊れましたかね。


長谷川如是閑へ

胸に手をあて
たゞ何となく
『自由』を愛してゐるお方
時代のハムレット
永遠の独身主義者よ、
私が女なら、
あなたの所に
押かけ女房に出かけます
飼犬どもをばみんな叩き出して
畳たゝいて
これ宿六
如是閑さん
長いこと理屈書いてゐて
理論の煙幕
『あの』『その』づくしで
あなたの良心済みますか
まあ/\隣近所のおかみさん達
ものは試しに
『あの』『その』数へて
ごらんなさい
これさ山の神
可愛い女房よ
まあ、まあ、怒るな
理論といふものは
つまつた時には
あの、その、さうした、
かうした、それ自体、
然しながら、あの、その、
然し、それは、それ自体
さうしたもんだよ。


中野重治へ

裾の乱れを気にばかりせず
気宇濶達の小説を書き給へ、
『小説の書けない小説家』
『小さい一つの記
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