を民衆へ披露するのは
ちと民衆が可哀さうで御座らうて、
不渡り手形のやうな文学を書いて
民衆啓蒙も聞いてあきれる、
相当あつちこつち与太り廻つてきた
横線小切手のやうに
君の作品や理論がひねくりまはり、
読者の手許に着いたときは
結局一銭も預金がなかつたとさ、
文学の重役さまよ、
果してジャアナリズムは君に
安楽椅子を与へてゐるだらうか、
安楽椅子が君の上に
腰をかけてゐなかつたら幸せだね、
平林たい子へ
女の心は
バンジョウか
カスタネットか
こころが躍れば
身がふるふ、
あなたの心は
ビクともしない。
板額女
男嫌ひで
押す文学、
揺すぶりませうか
あなたの昔の想ひ出を
花|簪《かんざし》
桃割の日のことを
初恋の人もあつたでせう、
冗談ぢやない
あなたの心臓は
沢庵漬の
重石ぢやあるまいし
少しは伸びたり
縮んだりして戴きたい、
いまは
男は『叫び』の
女は『嗚咽』の
文学を書く時代です、
あなたにはそれが
全くない
女の美しい痙攣がない。
武田麟太郎へ
あなたは他人に
好色の戒めを仰言《おつしや》るから
私はあなたに文学の戒めを申しませう
あなたはリアリズムの
媒妁
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