しのない詩の涎れを
遂に散文の皿でうけた。
政治家犬養健[#「犬養健」はゴチック]は片脚
文学の義足をつけて鳴らしてゐる。
高見順[#「高見順」はゴチック]は事件屋のやうに
人生から問題をさがす
彼の小説は読者をなだめるだけで精一杯。
理論家窪川鶴次郎[#「窪川鶴次郎」はゴチック]は彼女に手を出して
手を噛まれた――小説といふ彼女に
窪川稲子[#「窪川稲子」はゴチック]の嫉妬が小説を書かせるほど
彼女は利巧者で、小説家で
黒襟をはずしてアッパッパを着る
時代性も承知してゐる。
名誉な太宰治[#「太宰治」はゴチック]は
痲痺状態で小説を書くコツを悪用する。
大森義太郎[#「大森義太郎」はゴチック]、実に長いいゝ名前だ
痰切飴のやうにイデオロギーを
柔らかに融かしてくれる。
島木健作[#「島木健作」はゴチック]、君は癩小説のお株を
奪つたものと決闘したまへ
次々と君のお株を奪ふもののために
十二連発で撃ち給へ
しかし自分のために最後の一発を残すのを忘れるな。
正宗白鳥[#「正宗白鳥」はゴチック]は皮肉をいふことの楽しみも尽きさうだ。
旧名須井一、改メ加賀耿二[#「加賀耿二」はゴチック]

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