ジャアナリズムは彼の良き航空母艦。
作家よ、僕という諷刺詩人を
文壇に住まはせてをくな、
復讐鬼を抱いて寝てゐるやうなものだ、
黙殺を唯一の武器とするものも
また僕に可愛がられる
膏薬だらけの尻には太い注射を
徒党の頭からは、煮湯と火をつけたガソリン瓶を
彼女達にとつても僕は
数千里も長い鼻の下の用意がある
心から怒ることができない
不幸な女、神近市子[#「神近市子」はゴチック]よ
僕が幾度眼をこすつてみても君は優しい。
山本有三[#「山本有三」はゴチック]、自由主義の門番
あなたの良心に一応会釈をして通るだけだ。
病気のヒロイズムが文学を書かせるとき
森山啓[#「森山啓」はゴチック]を、地球の滅亡の不安が捉へる
君はもつと君の体温計に相談して
ものを書く必要がある。
ダブルベッドで一人で寝てゐる
処女、長谷川如是閑[#「長谷川如是閑」はゴチック]
二つの枕を一人で占領してゐる
右の枕でも、左の枕でも気儘に使ふ。
精々凝つた言葉をひねり出すために
りきんでゐる北川冬彦[#「北川冬彦」はゴチック]は
ワキガのやうな鼻持のならない警句を吐く
僕は君が定型詩をつくるのを永遠に待つてゐる。

前へ 次へ
全32ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング