幸な都会の旅人よ、
地下鉄を走るとき
爽快な風が吹く
でも少しも嬉しくない
政治といふ大きな奴の
肛門の中を走るやうだから
地下鉄は
つまり多少臭いところだ。


銀座

もし東京に裏街といふものが
なかつたら
銀座は日本一の表街だが、
表は表だが
銀座は
医者にひつくりかへされた
トラホームの眼瞼のやうだ
ブツブツと華美《はで》で賑やかな
消費の粒が
まつかにただれて列んでゐる
突如
  ウヰ[#「ヰ」の小文字]ンドーに
煉瓦を投げつけて
金塊を盗む悪漢現る。


旭川風物詩

師団通り所見

鈴蘭通りの美しさ
北国の夜の街は白痴美
商店街のネオンサインは
光りの瞼をうごかさず
もつとも人生万事
動けば金がかかるからね
でも街を静寂から救ふものは
光りの明滅ではなく
市民が活動的であることだ!
光りも、心も
共に明るい街となれ
我々の旭川よ!


北海ホテルの茶房

北海ホテルの茶房で
僕はひとゝきの旅愁を味ふ
こゝは旭川のジャーナリストの巣で
卓上の桜草をふるはして
打合せをしたり原稿を書いたり
フレー、ジャーナリスト
文化は新聞から
市民のために
精々イキのよい
人生を探しだして
前へ 次へ
全5ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング