呪ふ値打はあるが
すでにそれもない
後の時ではなく、前の時が
叫喚もなく、苦悩の声と、絶望の歌とを
美しい娘のやうな手をもつて拭ひ去るだらう
腐爛した土地を新しい時は
新しく抱きかゝへるだらう
本能的な醜い饗宴に向ふ列の
通り去つた後に
新しい母親は地球を抱くだらう
雌鶏が蛇を孵すためにではなく
平和を孵すために
たゞ信ぜよ、新しい時を
後の時ではなく
前の時を――
昔の闘士、今の泥酔漢
気持よく酔つぱらへ私の友よ、
酔つてそれほど楽しくなれるなら――、
匍《は》ひまわれ――苦しさうに
君がどんなに嘔吐《へど》を吐いて
夜のネオンサインの下を歩かうとも
百米とはアスファルトを汚せまいから、
思想が君にとりついてゐた時
君は巨人のやうに歩き
巨人のやうに議論したものであつた、
いまはまるで雑巾《ざうきん》のやうに
レインコートの裾で銀座裏を掃いてあるく
友達の顔に酒をぶつかけたらいゝ――、
げらげら笑ひ給へ、鼻水を吸ひあげろ、
鮨《すし》を頬ばつてカラミで泣け
あゝ、そしてガードの下を酔つぱらつて
曾つてのコンミニストが匍つてゆく、
私は君を悲しまない、
スペインの子供達が
看護卒
前へ
次へ
全33ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング