祈祷[*「祷」はしめすへんに壽]することをすつかり忘れた僧侶のやうに
私は最大にグウタラになつて
悪魔を味方につけて
運命よ、お前を私の墓の中にまで
引きづりこんでやらうと思ふ、
死ぬことを決して怖れはしないが
自殺をするために
体をうごかす努力を払ふなら
生きるために動かす方が努力が少いのだ
ものうい、にくらしい一日よ、
まるで頭に鉄の鉢巻をしてゐるやうに
階級のことを忘れることができなくて頭が痛む
なんてヤクザな運命を
どこまで持ち運んでゆかうとするのか
茜色のソファーのやうな雲が
空を走つてゆくのをぼんやりと眺め
私もあの雲にゆつくりと腰を下ろして
愛する国への飛行を夢みたり
とりとめもない歌うたひにかゝつては
私の運命はさまざまに
可愛がられたり憎まれたりするばかりだ。


政治は私の恋人であつた

あんなに政治を可愛がつたのに
みんなはこんなに邪剣にしてゐる
私はいまもそのことで夜更けまで考へてゐる
私はたつた一言でも
人生を肯くことができるのは
みな政治の訓練が私をさうした、
すべての友は政治に損はれ
捨てた女を憎むやうに
彼女を憎んでゐるだけで
現実の上には何んの愛も
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