感心させない
銀座一丁目から新橋まで――、
銀座は地獄に筒抜けで
華かさの尽きたところが真暗だ、
哀れな市民よ、
なんべん此処を往復しようとするのか。
日本の憂愁《トスカ》
友よ、出かけよう
何処へか、街にさまよひに
勉強づらをして図書館へ
あるひは林へ
樹の下で呪ひに
病苦のためには鶏卵を買ひに
思想のためには本を買ひに
さあ出歩るかう
さあ出歩るかう
感謝すべきものが
どこかの街の片隅に
落つこちてゐるかも知れないよ
足で蹴つたチャリンといふ
金属の音で
君の神経を目覚めさせよ
よし下駄の金具を
蹴つとばしたとしても
パンを買ふかコオヒイを
のむ金をその音で想ひ出せよ
拾へよ、何でも
奪へよ、なんでも
吐けよ、血痰を
呑みこめ、苦汁を
あゝ、我等の日本は
いまエメラルドグリーンの
憂鬱な色の中にひたつてゐる
立てよ
私の膝小僧
お前の膝小僧
イザリに活を入れるために
我等の背後に
現実が廻つた
トンと腰のあたりを
そいつが蹴つてくれたのに
をどろくばかりで
立ちあがらない
さあ出歩るかう
さあ出歩るかう
日本の憂愁のために
想ひ、悩み、苦しむ
友はうぢやうぢやと
街を歩いてゐ
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