さしい一羽の小鳥のために
私は精根を傾けつくして
小さな微妙な胸毛の
ふるへにも耳傾けよう、
可憐な一片の花弁のみぶるひにも
私は眼を大きく見張らう、
一枚の葉の失望的なふるへにも
私はともに苦しむのだ、
立て、野のものぐさの牛よ、
意志的な額を突んだして
前足で、石をガリガリ掻き始めよ、
雲雀は空に歌ひあがれ、
蛇よ、とぐろをほどいて攻勢にでろ、
蝶よ、海を渡たれ
あゝ、私はお前が、海に落ちたら
葬つてあげよう、
野から谷から人間の住むところまで
やつてきた風を、私は迎へる、
私の熱した頭は
お前の風のくちづけで一層熱くなる、
凍えてしまつた頭をもつた人々を
熱した風よ、
お前の愛でとかしてくれ、
人々は高い声をだし始めるだらう
非常にはげしい声をだし始めよ、
とほくからきた風よ、
お前が谷を駈けぬけるとき
パイプオルガンのやうに壮厳に
真実の歌をうたつた
人間の意志の強さを合奏した、
私はどのやうに屈折の
ある谷であらうとも
最後の海へ出るところまで
はげしいお前の風の
道連れになるだらう。
窓と犬のために歌ふ
精神の硬化から
開放されよ、
わが友達は
良き朝夕のために
窓を
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