う
勝手にホザク安いラッパのやうに
不平を呟やいて
それだけのことで終りだ
春も終りだ
もちろん夏も素通りだ。
新ドンキホーテ
若い跳ねまわる仔馬、
青春時代の勇気、
それを誰が引継いでくれるだらうか、
勇気のやり場は
街にはない、
若いくせにノラリクラリとした
思索がある、
街の若い仔馬は
精力のやり場にこまつてゐる
女馬は強い匂ひハッカ草を
たてがみにさして跳ねてゆく
男馬がちかづくと
女馬はうるさいといつて
後脚で蹴る。
ああ、ちかごろは日増に
滑稽な出来事が殖えてきた
そこで私が芝居気を出し
ドンキホーテを気取つて
動揺の多い街の中で
槍をふりまはす
槍は空をきつて
わが勇気は地に落ちる
だが私は信じなければならない、
それが芝居であるといふことを
忘れてはならない、
槍をふりまはすことも
敵にきつてかかることも
敵を切り倒すことも
敵にきられることも
すべては千年の後には
をかしな物語りであつたことがわかる
一九四〇年代の若い青年は
勇気のやり場に困つて
クラゲの三杯酢で一杯のんで
女給の脛に喰ひついたといふ
物語りも記録にのこるだらう
すべては順調だ
平野は涯もな
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