さとの馬よ
お前の胴体の中で
じつと考へこんでゐたくなつたよ
『自由』といふたつた二語も
満足にしやべらして貰へない位なら
凍つた夜、
馬よ、お前のやうに
鼻から白い呼吸を吐きに
わたしは寒い郷里にかへりたくなつたよ
銀河
私は窓をひらいて夜の空をみた
そして心に叫んだ
――おゝ空よ私を救へよ、と
とほくの銀河の美しい光沢よ
私はお前に乗りたい
心の重い、にぶい、動きのとれない
救ひのない悲しい心をお前に乗せたい
きのふお前は私の願ひをきいてくれた
きのふお前は私のところに
光りをとゞけてくれた
夜であつた
私はお前の光りにふれた
なんてお前の手は柔かかつたのだらう
星の光り
ただお前は私のところに届いただけで
高いところまでは引きあげてはくれない、
私の心はお前とつれだつてならんだが
なんと鉛より重い肉体の重さは地を離れず
叫ぶ苦痛は心ではなかつた
心におき忘れられた
肉体の絶え入るやうな哀訴であつた
銀河よ、
ついにお前は私を
とほくのせ去つてはくれないのか
かなしい自由は残されてゐる
たつた一つの地上の自由であるのか
他にもつと果され得る願ひや
幸福の生活があるのか
自
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