い都会
私は田舎の土の匂ひがなつかしい、
ふくらふ
私の梟は
かなしみの中に
とぢこめられて眠ることができない
ばたばたと樹から樹へとぶ
そして唄ふ
――オー、オ、オ、オ、
生れねばよウ
オ、オ、オ、オ、オーイ。
私のふくらふは
恐怖を愛し
疑惑を楽しんでゐる
夜の巫女だ
曾つては予言者であつたが
いまはずつとたれより
いたいたしい心で祈る巫女だ
私のふくらふは
すべての眠りの中で
憎しみを歌ひ
すべてのものの夢の間に
撒きちらす魔法の粉のやうに
醒めても去らない
痲痺を撒く、
私のふくらふは
ふりまくものをもつてゐる
それは夜の間に歌ふといふことだ、
不眠症
私の太陽よ
お前は暁になることを
ぐづぐづしてゐるぞ
私のまんじりともしない眼は
月の光りにも劣らず
夜通し光つてゐる
夜の周囲のものは
ほゝゑんでゐるものはひとつもない
私の心もまたニコリとも笑はない
私は夜毎考へ
考へ疲れることを知らない
人々の不幸に就いて
また自分の不幸に就いて
ずいぶん長い間考へてきた
ながい、ながい夜、
微笑するものもない夜、
声たてるものもない夜、
窒息的な夜、
時計の針はてん
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