酒をのんでゐたときよりも
はるかに痲痺的となつた
いつも頭の芯が熱してゐて
朝の新聞も頭に入らない
何やら政治的花形が
叫んでゐるやうだが
うるさいばかりだ
けさもまた民間飛行機がとんでゆく
あゝ、人生が二重にうるさくなつてきた
物語りは地上だけで
沢山なのに――
さて今日の仕事は
炭をさがしにゆくことか
反省の中で成熟する
吾が友よ
私等若さに就いて反省する日の
なんと暗い沈みがちなことだらう
だがこのことを怖れるにはあたらない
ただ生きるのだ
働くものも、徒食するものも
いまは全く平等な不幸の中にゐるのだから
良心と呼ばれ、正義と呼ばれるものも
いまはただ生きぬくといふことで
証明されるのだから
若い反省の糸は
死へはつながれてゐない
ただ無反省な死のみが
地球の廃滅を早めるだけだ
無反省な死――ヨーロッパの出来事がそれだ、
吾が友よ
毎朝暦をめくり給へ
ときには女の子にも心を動かし
たまには美しい天でも仰ぎ給へ
それからカツレツでも喰へ
すべて若さは反省の中で成熟する
時は若い力によって遮断され
知恵は新しく登場をするだらう
人生の青二才
生き抜くことの難かしさに
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