高鳴るのに
まかせてくれよ
恋と戦ひとを一緒に企てる
わたしの強情さを
君よ、笑つてくれたまい、
ゴシップも飛ばし給へ、
世のゴシップをいつかは
愛の発電機が
だまらせるだらう、
わたしは愛するものの
庇護のもとにある幸福に酔ふ、
庇護の下から
たたかひに出てゆく、
どんなに勇気がでるだらう、
恋には暇と時間がいるとは
君がプロレタリアートの
恋愛を軽蔑してゐる一つの理由だ、
女を愛する時間にさへ節約的な
君が階級闘争に熱心であることは偉い、
いつそ飯を喰ふことも
やめてしまつたらどうか、
階級を、父を母を、
兄妹を、妻子を、同志を、
一切は愛と真理のための闘ひだ、
肉親の愛をつよく肯定したまへ、
さらに百尺竿頭一歩をすゝめ
たまには赤の他人を愛する練習もしてみたまへ、
君の心臓は美しいものの心臓と触れるのだ、


愛の一刀両断

プロレタリアの恋愛は
どういふ恰好でするものだらう、
ブルジョアたちの恋愛と
どんなに様子が違はなければならないものだらう、
プロレタリアの若い連中は
熱心にそれを知りたがつてゐる、
わたしは思ふのです、
金盞花の蜜を吸ふ蝶のやうに、
やつぱり花の上で酔ふものさ、
友よ、君が妙に愛することに
臆病になり、遠慮勝なのはお可笑しくおもふ、
わたしは考へる
階級の熱情は単一に燃えよう、
愛は天ビン棒とは違ふから
一方が上れば一方が下るとはかぎらない、
女の重味で闘志が跳ねあがるとは思はない、
愛とたたかひと両方抱へて馬でとぶさ、
キングコングのやうに敵に刃向かふ、
国粋主義者より
ずつと我々コンミニストはスマートで
モダンで科学的でなければならないのに、
そして愛ははるかに彼等より
時代的である筈なのに、
どうして野暮な連中が多いのだらう、
わたしは世界中の女に惚れたいと思ふ、
すべての申込を拒否しないね、
闘つたり、愛したり素晴しいぢやないか
恋か、それとも部所か、
そのことで同志は悩んだ経験があらう、
いよいよとなれば愛の問題は
泥鰌屋が泥鰌を裂くやうな意志をもつて
一刀両断だ、
ステンカラージンのやうに
龍神へ女をささげて闘ひゆく
友よ、御安心下さい
恋愛の一つや二つしても
もつて生れたイデオロギーは腐りませんから、


女の強さを愛してゐる

激しくたたかつた女は
今頃はどうしてゐるだらう、
憎み、愛し、たがひに生活の混乱を
のがれよ
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