やんは踊りたいといふ純真の発露さ、
 僕は託児所の必要を痛感し
 帽子をまはして広く浄財を集めたゞけだ、
 働く母親をもつた労働者農民の家庭のためにも、
 君のやうなグータラ詩人の母親をなくした
 家庭のためにも
 託児所の建設は是非必要なんだ、
 僕は君の子供の育児係りとしてそれを痛感した
 僕は明日も銀座にでかけるよ、
 それが悪かつたら育児係りを辞職する」
「君の気持はわかつてゐる、
 僕もサクラ子の父親として恥じるものがある
 だが銀座にでかけることだけは勘弁してくれ」
「それでは僕は辞職する
 尾山君、サクラ子ちやんは
 至急母親が必要なんだよ
 君達の恋愛は結婚にすゝむべきだな、
 そしてりん子君は母親としての任務を果すべきだ」
そのとき女流詩人吉田りん子は不意に立ち上つた、
そして玄関の方に歩きながら
「大西さん、わたしは恋愛の自由は認めるけれどもね、
 女が母性の義務を負はなければならない
 そんな感情はもちあはさないの!」
すると大西三津三は瀬戸の火鉢を
平手ではげしく叩きながら
彼女の背後から「出て行け」と吐[#「吐」に「ママ」の注記]鳴りつけた、
「すべての女はみ
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