秘書は
 あなたに対してどんな仕事をするのですか
――いえ、それは当会杜の機密に
 属してをりますから公開できませんの。

   三十七

詩人達の朝飯が始まつた、
炊事係りの尾山清之助は
ハンペンの味噌汁をつくつた
喰ふとき草刈秘書から抗議がでた
――いつたい、ハンペンなどが人間の喰ひ物かい、
 いつたいハンペンが人類の食ひ物として
 歴史に現はれ始めたのはいつのことかは知らない、
 しかしかゝる変てこなものを
 平気で喰ふ人間の神経のにぶさが問題だよ、
尾山炊事係りは憤然として
――それは[#底本の「それに」を訂正]大いに違ふ、ハンペンを攻撃する
 君の神経の方がどうかしてゐる
 食物とは、決して歯や舌に負担を
 かけるやうな固いものを選むべきではない
 つまりハンペンは舌より柔らかい食物だ、
 文明人ほど柔らかいものを喰ふ
 みたまへ、西洋人の喰べ物を
 ジャム、マヨネーヅソース、ミルク、
 バタ、チーズ、シュークリーム、
――なんだい、その最後のシュークリームといふのは
――いや、僕が大好きだからさ、
 さういふ具合に文明人ほど
 食物に流動体を選むやうになる
 ハンペンとは現
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