なくとも
わたしはすべてを知つてゐる、
ソビヱットのこと、
旦那の若い頃からの友達ゴリキイ旦那の最近の便りも
せつせと走り廻つたり、聴き廻つたりして、
世の中のだんだん変つてゆくのを
知ることは私の楽しみだ。

   2

旦那の歌はもう聴きあきた、
汚らはしい金持の拍手と
無理をし算段をして入場料を払ひ
旦那の芸術を聴きにくる人々の
割れるやうな拍手が、ホールに響くのも毎度のことだ
だが大きな働いてゐる手の持主
労働者の拍手をついぞ聞いたこともない、
なにせ入場料が、二円、四円、六円ではね、

   3

かう見えても、わしは蚤の仲間のコンミニストなのだよ、
だから御主人シャリアピンの批判もできるのさ、
まあ笑はないで下さい。
  蚤のコンミニスト
  さらば、我が蚤に
  心ゆくまで
  悪態を言はしてみよ、
  蚤の悪態、ハハハハハ
  蚤―、ハハハハハ
  ハハハハハ、蚤のコンミニスト
いかがで御座る、
見やう聴き真似で御主人の
メフィストの蚤の歌に
そのまゝそつくりの巧みさがあるでせう。
日本でもこれを歌ひました
桟敷から誰かゞロシア語で吐[#「吐」に「ママ」の注記]鳴つた、
前へ 次へ
全98ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング