の服装も
色彩は豊富だ、
ただ一色であるものは
戦に出た者達が
生きてかへるか
死んでかへるか
二つにひとつである、
ひとしきり猛烈な集団戦があつて、
鎧に桜の枝さして
出陣した若いロマンチストも、
鬼面人を驚ろかす
兜をかぶつた武士も、
敵の足を長柄の槍で横に払つて
転んだところを
首を掻いた卑怯者も、
百姓家を襲つて
百姓の首頂戴して敵の首に
間に合はした横着者も、
すべての戦士意気揚々と
陣営にひきあげてきた、
これらの戦士達が
必ず敵の首を引つ提げて
来るとはかぎらない、
カラ手で帰るものもある、
だが彼は悔いてはゐない、
まだ胴に首がついてゐる
敵がたくさんゐるから、
彼は負傷して帰つてきた
彼は大将の前で一切を報告した
肩の痛みは焼けるやうだ、
苦痛は電光のやうに顔を走つて
顔の筋肉をぴりぴりふるはせ
――誰かある、彼を陣営にひきとらせ
 手当いたしてつかはせ、
引退つて陣営にかへると
彼は精一杯
苦痛に泣いたり、わめいたりする、
この戦ひに誰が一番勇気があつて
首を沢山獲つてきたか、
栗毛の馬の持主か、
緋縅の鎧か
千軍万馬の戦功者
クロガネ五郎兵衛久春殿か、
いやいや彼
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