つてきた。
のぞいてごらん、
ガソリン検量器を、
あゝ、まもなくガソリンは尽きるだらう。
帯のやうに白く見えるウスリイ鉄道、
沿線の街々よ、
イマンの街よ、
プロハスコよ、
ウスリイよ、
クラヱフスキイよ、
街・街よ、空を漂泊する我々の
よろめく足取りに驚ろいてくれるな
露満国境の線を縫つてとぶ、
千鳥足の苦悶を、あざ笑へ、
ソビヱットから平穏を
急速にのぞむものが、次々と現はれる
新しい苦しみの登場に堪へなかつたのだ、
そして陥るところの心理的空白の路
またはソビヱットに対する
一面的狂信主義者がたどる幻滅の路、
これらの人々の路はこゝの国境に展けてゐる。

操縦士

赤い土地から、白い風穴へ、
おちこんだ私だ、
北から南へ押しながされる私だ。
ヨーロッパや東洋は私を歓迎するだらう
其処では私の脱落者は、賞讃されるだらう、
ソビヱットを語れといふだらう。
唇が足まで垂れ下つた
鉄の妖怪の正体を語れといふだらう。
新聞記者は私達を取り囲んで
一日に黒パンを幾ポンド支給されるかとか、
強制労働は苦痛だらうとか、
常識的な質問をし
私はこれに常識的な答をするだらう。
ソビヱットの苦痛は

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