影を見給へ、
私もそれを見よう、
君の父の死は、
曾つて歴史に現はれたことがない
新しい死のタイプだ。
ソビヱットに反逆する人々を
我々はギロチンの上へおくる。
そして貴重な生命を断つ――。
人間を死に導く権利を
いまほど正しく行使することが出来る時代が、
人類の歴史が始まつて以来あつたか?
そこでは物盗りを死刑するやうにではない、
強姦者を処刑するやうにではない、
新しい階級的犯罪に
新しい死のタイプを我々が与へるのだ。
友よ、君は父の死を解決せよ、
雲の中の、追想の糸を断ちきれ、
理解しろ、ソビヱットのあらゆる事件を、
操縦士
ドミトリー君、
親切な友よ、
だが、すでに遅い、
私の操縦士は、破れた胸から
二つの翼をひきだしたのだ、
精神の均斉のない鳥が
どうして満足に自分のネグラに帰れるだらう。
思つても私は怖ろしいのだ、
軍隊では上から下まで
厳罰主義でつらぬかれてゐる。
笑ひながら上官は部下をうつ、
部下は笑ひながら打たれる、
あいつらの苦痛の性質がまるでちがふんだ。
なんといふ理解しがたいことだ。
機関士
力尽きた鳥よ、
聴け、発動機の音を――、
お前の咽喉は異様に鳴
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