してゐるんだ。
もし私が、私の所属部隊、
沿海洲ワスクレミヱンカ飛行、
第三十編隊兵舎から
この満洲の国境まで、
テクつて来たとしたら幾日かゝるだらうね、
想像しても怖ろしいことだ――。
あらゆる河を、路々呑み乾しても、
私の苦痛に乾ききつた咽喉は治らぬだらう、
友よ、この空飛ぶ靴を私に借せ、
同志ドミトリー君よ、
君はパラシュートで飛び降りれ――。
君はソビヱットに降りれ――。
私は機体を満洲国へ突入しよう。

機関士

君はまるで駄々つ子だよ、
一台の飛行機に
二つの闘争が乗つてゐるんだよ、
君が私を愛してゐる友情と、
私が君を愛してゐる友情と、
どつちが熱烈だらうか。
私はソビヱットを愛してゐると同様に、
君をもほんとうに心から愛してゐるよ、
階級的行動は、離れ離れではいけない
すべて共働性の上にたつてゐなければならない、
若し君と私との友情が、
我々にとつて断ち難いものであつたら
君は私に、どういふ方法をとつたらよいか、
それを教へてくれ給へ、

操縦士

私には判らないのだ、
私は君の友情のために苦しいのだ、
私は――君を同乗させて
きたといふことは失敗だつた、
私は反ソビヱ
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