つのればつのるほど
私の顔は心と反対に――。
大げさに、快活になり
笑ひふるまつたのだ、
あらゆるものが、ゲ・ベ・ウに見えた、
私の心臓までもゲ・ベ・ウになりやがつた。
刺す虫までも邪険に
毒を私の肉体に注ぎこんだ。
私は周囲をみまはした、
君等の心臓がなんといふ
真実な太鼓となつて
建設の歌をうたつてゐるんだらう
私はそれが理解できなかつた、
君等は大きな声で、大つぴらに
ソビヱットの悪態を吐《つ》いたり、
また歓びの声をあげたりしてゐる。
それが不思議なんだ、
どうして諸君は、
あんなに率直に語ることができるかと――。
機関士
可哀さうな、ワフラメヱフよ、
君はいま、歩いてゐるんぢやないんだよ、
君は金属の鳥に乗つてゐるんだよ、
しつかりしてくれよ。
見給へ、下を、
君は一分間に我々の飛行機が
幾つのソビヱットの林区を
飛び越してゐるかを知つてゐるか。
操縦士
私は知らない――。
地図、コムパス、を無視してしまつた。
飛ぶところへ、飛んでゆけ、
私は飛行機に乗つてゐるんぢやないんだ。
空を歩るいてゐるんだ。
何て早い靴だらう。
私はいま私の運命を
短時間で解決してしまはうと
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