で切り倒しながら走りつゞける、
丁度その時、プラムバゴ中隊と
同じやうな心理状態、
同じやうなスピードで、
走つてきたのは日本の一個中隊、
丘の高みで二つの敵味方がぶつかつたとき、
指揮官たちは思慮深く後退し
樹の蔭に立膝をついて
たゞ一語、突撃――と叫んだ、
黄色い土埃りが、帯のやうに天に舞ひ上り、
高く前脚をあげた大きな馬が
二頭取つ組み合つて
しばしもみ合ひ
金具をガチャ/\鳴らすやうに、
何か不快な金属の触れ合ふ音がしたかと思ふと、
プラムバゴ中隊の全員の上着は
みるみる真赤な上着になり
でも勇敢に、剣をふりまはし
日本兵に切りかゝり
口々に彼等は叫ぶ、
――こん畜生、
こんな豚喰へるか、
こんな豚喰へるか。
空の脱走者
機関士
舵をあげろ 同志ワフラメヱフ
君はなんといふ眼をするのだ
そんな眼差しを何処に隠してゐたのだ。
我々の飛行隊では
君はけつして、そんな悲しさうな
表情をしたことがなかつた。
操縦士
心はいつも泣いてゐたさ、
心は眼には反映しなかつた、
ソビヱットの現実に追従してきたのだ。
ゲ・ベ・ウに対する恐怖は一日ごとに大きくなつた。
恐怖が
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