がるんだ、
さういふ時は、しんみりと
――争はれねいもんだ
矢張り、おれもルンペン上りだな――と思ふよ
てめいに俺は縁切りの手紙を、こないだ出した
今更、手紙書ける義理ぢやねいが、
俺の事ぢやない、仲間のことなんだ、
この手紙だけ書かしてくれよ
この手紙着いたら、仲間を、みんな集めて、
てめいが、ゴミ箱の上に、のつかつて、
大きな声で皆に、この手紙読んで聞かしてくれよ、
俺達が出発の時、
東京駅は、万歳、万歳、万歳だ、
引率者が、俺達をホームに
並べておいて、かう演説した、
光栄ある移民諸君――。
政府は、何故に
ルンペン各位に、
わざわざ、御武装を願つたか、
失業者、山野に満ちる時、
何故に諸君が、
特に選ばれて、
生命線に乗出すか、
それが、所謂、
所謂、それが、
それが、つまり、
政府の真意のあるところで
あるのであります――。
おれたちは偉い人の
演説の意味は呑み込めねいや、
然しながら、その時演説は俺達の胸にグンと突き上げてきたね、
涙が出たね、
野郎、うめい事オダテやがるな、と思つたね、
だが、やつぱり泣けてきたね、
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