《のど》のために
絶叫する機会を与へてやれ、


まもなく霜が来る

さまよへ私の魂
春から冬までたどりつけ
私は季節の渡り者
髪は女のやうに乱れ、
こゝろもまたそのやうに乱れる、
そして男の中に、男と生れたことが
幸福であるか
ふしあはせであるかわからない、
もし良い世界がやつてきたら
私のやうな女性的なものは
なんの必要もないだらう、
ただ今はあらゆる男たちも
女でさへも
尚男性的に
生活に憤らねばならない
魂を怒りに勃発させることは
一人でも多い方がいゝのだから、
いくたびも春から冬まで
さまよふ
甘やかされてゐる男のために
罰はいつぺんにやつてくる、
我々はそれを怖れよ、
生活の中から正しい答へを
ひき出さなければならない
もう間もなく霜がくる、
葉は凍えようとしてゐる、
伊達《だて》なマントは綺麗だ
だが包まれた体ははげしくふるへてゐる、


ヴォルガ河のために

ヴォルガ河よ、
わが友よ。
流れよ
私は君を見たこともなければ
また君の流れの響をきいたこともない
ただ君が悠々たる水のかたまりを
陸続として
どこからともなく下流にむかつて
押しだしてゐることを知つてゐる、
しか
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