ても
すぐ二三時間は経つてしまふ、
それを喜べ、
喜ぶことは良いことである、
私の絶望上手は、
精神の貧しさを悲しんでゐる、
高邁な精神には縁のないことを
つくづく考へる、
愚劣な精神の労働にも
異常な感動を覚えることはどうしたことか、
その時生き甲斐をかんじ
そのとき茫漠は去り、
友の哀れむべき精神の工場から
濛々と不安のけむりが
立ちあがつてゐるのを見る、
あゝ、その煙りは昼は灰色にみえ
夜は赤く美事に空に映つてゐる、
友は知らない、
その美しさを、
私だけがそれを見てゐる
私の美しさは私が知らない、
だが友達がそれを見てゐてくれるやうに、
友よ、たがひに信じよう、
恐るべき時代に生れ合したことを――、
歴史の空白を
吐息と、われらが糞尿と
言葉の塵芥と、血と、
むなしい労働と、小さな反抗とで埋めよう、
すべて意味深し、
それでよし、
私は誰よりも軽忽でありたい、
私は我等の勝利の万歳をまつ先に叫ぶ、
私は偉大な唖呆の役を買ふ、
水蒸気は濃霧だ、
その中に我等の意志は停船してゐる、
不安は霧だ、混濁だ、
この茫漠たる中で
君は化粧する時間など持つな、
ただ君の警笛のために
君の咽喉
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