い言葉、新しい形式を
鐘と太鼓で探しに行つたらいゝ、
我々にはそんな暇がない
我々は今日の問題について
今日の言葉をもつて歌ふのだ、
若いプロレタリア詩人よ、
我々は彼等のやうに
言葉に対して宿命論者であるな、
彼等は千万年もドモれ、
我等は
日本語に良きリズムの花を咲かせよ
我等はすべて
行進曲《マーチ》風に歌へ。
鶯の歌
それを待て、憤懣の夜の明け放されるのを
若い鶯たちの歌に依つて
生活は彩どられる
いくたびも、いくたびも、
暁の瞬間がくりかへされた
ほうほけきよ、ほうほけきよ、
だが、唯の一度も同じやうな暁はなかつた、
さうだ、鶯よ、君は生活の暗さに眼を掩ふなかれ
君はそこから首尾一貫した
よろこびの歌を曳きずりだせ
夜から暁にかけて
ほうほけきよ、ほうほけきよ、
新しい生活のタイプをつくるために
枝から枝へ渡りあるけ
そして最も位置のよい
反響するところを
ほうほけきよ、ほうほけきよ、
谷から谷へ鳴いてとほれ
既にして饑餓の歌は陳腐だ
それほどにも遠いところから
われらは飢と共にやつてきた
悲しみの歌は尽きてしまつた
残つてゐるものは喜びの歌ばかりだ。
幼稚園を卒業し給へ
続け、私の勝利の歌に、
君の歌が、
君の歌に、また私の歌は引継がれる
そして今日我々はバンザイを
揃つて叫ぶことに躊躇するな、
おゝ、友よ、私と共に
ブラボーを絶叫しよう、
君や我々は自分の純情をまもるために
実に立派な狡猾さをもつてゐる、
この狡猾さを
誇示するときに
あらゆる敵はまた好敵手として
敵の狡猾さをもつて立ち現はれる、
古い狡猾に対するに
新しい狡猾さをもつて答へてやるとき
我々の微笑もまた
彼等の眼には鬼のやうに恐ろしく見えるだらう、
更に我々は
この微笑をしだいに
憎悪の表情にかへてゆくとき
彼等の狡猾さは
単なる小賢しさであることを暴露しつゝ
最後の決戦を我々に向つて挑《いど》む
敵の千の表情と
万の感情の種類とを、
我々は我々のものとしなければならない、
単なる純情といふものが、
いかに愚劣であるかといふことに
気づいた瞬間
我々は始めて
戦術家の仲間入りができたときだ、
早く我々はこれらの
幼稚園を卒業しろ、
狡猾、悪行、憎悪、大胆、横柄、執拗
あらゆるこれらの敵のものを
我々のものと、財産としろ、
我々は彼等に
身をもつて接近しなければならない、
そ
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