主義になるといふことを
たがひに警戒しよう、
友よ、我々はこれらの批評家や
虎視眈眈《こしたん/\》たる多数の眼の輝やく中に
悠々として信ずるところの
作品を書き流さう、
批評家の凌辱をこばめ
君の作品にもし貞操があるとすれば――、
我々はむしろこの種の批評家に
黙殺されることを感謝していゝ、
友よ、批評家や、作家仲間の批評を
目標にして作品を書くな、
我々は大衆読者に直接愛されれば
それでいい――。
敗北の歌ひ手に与ふ
敗北の歌はしづかにきこえてくる、
君の肉体は良い声を発する
悲鳴と悔いと怖れと苦しみとの声
周囲の物、たとへば君の隠れ家の
扉がそのときどきのやうに
怖ろしい音を立てて軋《きし》つたか、
君はその物音に聴き耳をたてた、
敗北の君にとつては周囲のものすべてが
君と調和してゐる、
永遠の時間を
君が一瞬間占有して
敗北をうたひつづけることは自由だ、
ただ君の泣きつづける大胆さに
私は敬意を払ふだけだ、
然し私は君と共に
敗北の歌をうたはない
君は知つてゐる
針でついたほどの
小さな勝利をも発見することを――。
それを知らない君を哀れみながら、
私は私の時間を使用する
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