ありたい
お前はまたのろのろと通つてゆく、
だが我々は興奮しよう、
お前は年とつた姉のやうに
我々を愛してはゐるが理解がない、
お前は急速に
光つた繩を引きずつてゆく
そしてあらゆるものの足を光りでさらふ。

暁――、お前は恐怖の入口から現れて、
夜――、お前は恐怖の谷に隠れる、
恐怖と恐怖の中間に
人間は無数に往復するばかりだ、
虫は人間よりも
ずつと悠然と飛びまはり
はにかむ事を忘れないのは花許りだ、
暁、お前太陽は我々を引ずつて行つて
夜の中においてきぼりにする、
我々は生活のために充実した夢を見るか、
でなければ馬鹿々々しい忘却の夢だ。

太陽よ、
出口を示せ、出口を指させ、
入口があつて出口のない
世界があるとは私は信じられない
探す、そいつを、探せ、君も、
あいつ太陽が
暁と夜とをすばやく走りさる
一瞬間の時間に急速に。


接吻

ロシヤ人よ
君達の国では
――たふれるまで飲んでさわいだ(註1)
あのコバーク踊りは、もうないだらう。
だが悲しむな、
ドニヱプルの傍には
君等の心臓は高鳴り、踊つてゐるだらうから、
君等は飛び立つた、夜鶯《ナイチンゲール》のために悲しむな、

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