よし夜鶯《ナイチンゲール》はゐなくても
幸福な夜は君等のためにやつてきてゐるから、
君はもつと君等の国のシラミの為めにたたかへ、
それとも君等はシラミ共の
追ひ出しの仕事を
すつかり終つたとでもいふのか、
我々の国では追ひ出しどころか、
我々のところは――シラミそのものなんだ、
いま私の机の上にはロシアの同志、
君たちの優秀な詩人、
ベズイミンスキイと
ジャーロフと
ウートキンと
三人で撮つた写真が飾つてある、
私はいまそれに接吻した、
接吻――それは私の国の
習慣に依る愛情のあらはし方ではない、
東洋では十米突離れて
ペコリと頭をさげるのだ、
貴重な脳味噌の入つた頭を――。
肉体の熱さを伝ひ合ふ握手さへしない、
挨拶にかぎらないだらう、
我々の国ではすべてが形式的で
すべてがまだ伝統的だ、
あゝ、だが間もなく我々若者の手によつて
これらの習慣はなくなるだらう、
しかも新しい形式は始まり
新しい伝統は既に始まつてゐる
我々は目に見えてロシア的になつた、
ザーのロシアではなく
君たちのロシアに――。
ロシア人よ、
私の耳にはドニイブルの水の響はきこえない
きこえるものは我々の国の
凶悪な
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