喜のために
死を選ぶといふことも考へられるのだ、
生も肯定し
死も肯定する
私は何といふ慾張りだらう
中野重治よ、君はなぜ歌ひださないのか、
女達が味噌汁の歌をうたふことも肝心だが、
男達は「力」の歌を
うたふことがより必要だから
君は君の魅力ある詩のタイプを
再び示せ
たたかひは
けつして沈滞してはゐない、
たたかひはいまたけなはだ、
守備のために――、
攻勢のために――、
それはどのやうなタイプであつても構はない、
たたかひのために
我々は技術のあるつたけを
ぶち撒けよう、


太陽へ

それ夕暮がきた、朝だ、
昼だ、
もう夕暮がきた、
一日の通過のすばらしい早さよ、繰返しよ、
あいつ太陽よ、
草を一瞬間、温ためて去る、
お前は、我々のめまぐるしい生活に
手錠をはめて引きずつてゆく。
コンクリーの上を、砂利の上を、
丘陵の上を、河の上を、
あらゆるものの上を、
あらゆるものに影を与へて
その影を片つぱしから消してゆく。

太陽よ、
約束をしろ、
われわれの待つてゐる出来事を、
われわれのために
美しい五色のテープを
投げかける日を誓約せよ、
お前は早く通つてゆく、
だが我々は冷静で
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