ケチな宮殿であつた、
あの小屋の中には
国民が一人ゐたつけ、
忠良な国民がさ、
蕗の皮をムイて
そいつを手でポキン/\と折つて
鍋にブチ込んで煮て喰つてゐた農民がさ、
あの六十数歳の国民はどうしたらう、

おゝ、ふるさとよ、
カタツムリのヨダレか、
お蚕のやうに
私の記憶から綿々とひきだされて
尽きないものよ、
私は当分の間お前に逢へないよ、
*をつけるために
お前が立ちあがるために
いつもぽけつとに*を忍ばせてゐる
悪人になつたよ、
――金持どもが我々を悪人だと言ふんだ
私たちは
いまとても陽気に押し廻つてゐるんだ
我々の所謂、悪人は、仲間は
ふるさとよ、
みんなお前をなつかしがつてゐるよ。


瑞々しい眼をもつて

瑞々《みづ/\》しい眼をもつて私は君を見る
君は、それに瑞々しい眼をもつて答へよ、
答へるべきだ、答へる義務があるだらう、
私はそれを、君に強制する、
君はハラワタを隠すな、
ズルイ魚屋のやうに、
理論的な水をぶつかけて
ウロコを新しさうに見せかけるな、
君を喰つたものは
みんな下痢するだらうから、
足から始めて
腰、胴、胸、眼と
おづおづ相手を、下から見上げることをや
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