前進してゐる、
その証拠には
君は靴の裏をみせ給へ、
そんなに減つてゐるではないか、
我々は約束しよう、
全感情をもつて――、
我々は共に旅をつゞけると、
あゝ、運命よ、
我々の運命よ、
私は幾度もこの言葉を
繰り返していつも心におもふ、
なんと魅力たつぷりの
言葉だらうと――
更に、更に、我々の運命を
魅力多いものにしよう、
我々の運命は我々の手によつて
如何やうにも切りひらかれるのだから。
ふるさとへの詩
ふるさとよ、
私は当分お前に逢はないよ。
お前は泰然自若として、
不景気のソファに
腰をおろしてしまつたね、
とにかくお前は
私の生みの土地ではあつたが、
たゞ私に瞬間、産声をあげさしたところ
お前は邪険ではなかつたが
決して親切とは言へなかつたよ。
私はミルクで育つたから
ママ母より、
私は牛がなつかしいよ。
ふるさとよ、
くる/\渦巻く水が谷間にあつた、
あそこは非常に静かなところであつた、
ピチピチとヤマメや岩魚が跳ねてゐた、
針をおろすとすぐ魚は針に飛びついた、
だから釣なんか、ちつとも面白くなかつた。
自若として落ち着いた
ふるさとの不景気な山よ、
炭焼小屋は
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