友よ、
君へ『ゾラ』の理性を引渡す、
私はシヱ[#「ヱ」の小文字]クスピアの狂気を引受ける。


魅力あるものにしよう

友よ、
私が突拍子もない声を出しても
驚ろいてくれるな、
君が悲しんでゐるときに
私が楽しく歌つてもゆるしてくれ、
君が笑つてゐるときに
私が悲しんでゐるときもあるのだから。
共に自由に
泣いたり、笑つたりしよう、
そして私達の将来の運命について考へてみよう、
たがひに離れ離れに住んでゐても
寝床の中で、そのことをじつと考へてみよう、
明日は街角で逢はう、
感想を述べ合はう、
私は夜通し泣いてゐても
君にはきつと笑顔をみせるだらう、
――私はさうした性格なのだから、

私を誤解しないでくれ友よ、
私はほんとうに
我々の運命を愛してゐるのだから、
――よし今日の運命が
  よきにつけ
  悪しきにつけてもさ、
私達は明日を約束できるのだから、
おゝ、我々が今現に立つてゐるところ
そこは曾つて我々が
遠くでみつめてゐた地平線であつたのだ
さらに、私達は眼をあげよう、
前方をみよう、
そこには新しい、暁の地平線があるだらう、

いくつかの地平線を越えた、
このやうに我々は
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